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【中国崩壊】 見逃してはならない中国「一帯一路」の軍事的側面

「見逃してはならない中国「一帯一路」の軍事的側面」
古森 義久氏(元産経新聞記者)  JBpress 


 中国の習近平政権が進める「一帯一路」構想に対して、米国の官民から警戒の声が挙がっている。一帯一路は中国の世界的な野望を推進し、中国型の非民主主義的な国際秩序を広げる危険な計画だとみられているのだ。

 米国議会の「米中経済安保調査委員会」が1月下旬に開いた公聴会では、連邦議員や民間専門家からさまざまな懸念が表明された。とくに顕著だったのが、軍事面への警戒である。

米国主導の安全保障体制への挑戦
 米中経済安保調査委員会は、米中経済関係が米国の国家安全保障に及ぼす影響を調べることを任務とする議会の政策諮問機関である。主要メンバーは、連邦議会上下両院の超党派議員によって任命された12人の民間の専門家だ。1月25日、同調査委員会が「中国の一帯一路構想の経済的、軍事的意味」と題する公聴会を開いた。

 この公聴会では民間の専門家らを証人として招き、中国の一帯一路構想が米国の安全保障などにどう影響するかを検討した。同公聴会では、一帯一路がユーラシア大陸で米国の安全保障に有害な影響を及ぼすだろうという警戒の意見が目立った。

 証人の発言では、一帯一路の軍事的、安全保障面での意味に最大の重点が置かれた。日本では一帯一路というと経済的な効用の有無ばかりが論じられるのとは対照的である。

 公聴会では合計9人の専門家が証人として登場し、それぞれ詳細な見解を述べた。ここでは、一帯一路の軍事的な意味について証言した外交関係評議会の中国研究専門の上級研究員、エリ・ラトナー氏の意見を紹介しよう。外交関係評議会は民間の超党派の大手シンクタンクである。

 ラトナー氏は中国の対外安全保障政策や軍事動向を専門に研究してきた学者である。オバマ政権の国家安全保障会議で中国やアジア安保の政策を担当したこともある。どちらかといえば民主党系の学者だが、中国への現実的なアプローチは保守派からも評価されている。

 ラトナー氏はまず、米国が一帯一路の意味について考える際の大前提として以下の4点を挙げた。

(1)米国と中国はいまアジア全域で戦略的な競合状態にある。その競合の結果は今後の何十年もの国際関係での規則、規範、制度のあり方を決めることになる。

(2)現在、米国はこの競合で必ずしも優位に立っていない。中国が力を増せば、アジアでの米国主導の自由主義的な秩序が崩れ、中国式の非自由、非開放の秩序が築かれかねない。

(3)米国の歴代政権は、中国のユーラシアでのパワー拡大を真剣に受けとめず、中国の単なる経済発展計画と捉えてきた。

(4)だが、米国はアジアなどでの中国の非民主的な秩序の拡大を防ぐ能力を今なお保有している。中国側の弱点は多数あり、米国の衰退は既成の事実ではない。

 ラトナー氏はそのうえで、一帯一路の軍事的、戦略的な意味を考慮しなければならないと強調した。つまり、一帯一路には、中国が米国主導の安全保障体制を覆そうという意図があるのだという警告だった。

軍事戦略としての一帯一路構想
 ラトナー氏はこの公聴会で、さらに一帯一路の軍事的意味合いに関連して次のような諸点を指摘した。

【中国軍が海外に駐留】

 中国人民解放軍はこれまで、海外での基地の獲得を積極的に目指してきた。一帯一路はこの活動を大きく促進しうる。その形態としては、中国軍が一帯一路の重要プロジェクト防衛のために外国の特定地域に派遣される、あるいは逆に外国政府が自国内での一帯一路プロジェクト防衛のために、中国軍の駐留を求めることも考えられる。さらには、中国が外国への投資や債権放棄と引き換えに港や空港の使用権を得るという事態が、すでにスリランカやミャンマーで起きつつある。

 中国軍は海外で自軍を長期間機能させる能力がまだ欠けている。だが、その状況は訓練、ドクトリン、海外基地使用などの改善ですぐに変わりうる。中国軍は、とくにインド洋での新たな基地の獲得によって潜水艦戦力や対潜水艦戦闘能力を向上させることを意図している。その結果、インドへの脅威を増大させ、さらにインド洋の海上輸送路の保護や妨害が容易となる。この種の動きは一帯一路と並行して進むだろう。

【エネルギー安全保障を強化】

 中国にとっての一帯一路の最大の戦略的利益は、エネルギーの自国への輸入ルートを多様化できる点である。これまで中国は、南シナ海から中国東海岸への海上の石油運搬によるエネルギー輸入に全面的に依存してきた。そのため、中国側には「マラッカ・ジレンマ」とも呼ばれる安全保障上の危険性が生じていた。

 ところが一帯一路は、諸外国への新たな港、道路、パイプラインなどの建設により、中国へのエネルギー輸送を多様化する。とくにロシアや中央アジア諸国を経由する石油パイプラインや南アジア、東南アジアでの新たな海港の建設は、中国のエネルギー安全保障を大幅に強化して、軍事面での貢献ともなる。

【テロ対策にも有効】

 中国政府にとって、新疆ウイグル地区でのテロは国家安全保障上の重大課題となっている。中国当局の閉鎖的な政策のために、その実態は正確には分からないが、シリアやイラク、アフガニスタンからのテロ組織要員の移動や、中国当局の弾圧の強化で、テロの状況は悪化が予測される。

 一帯一路は中国北西部の経済開発構想を含んでおり、新疆ウイグル地区の住民の生活水準の向上など、テロの温床を減らす効果も期待される。

【非自由主義的な安保秩序を構築】

 一帯一路が中国政府の構想どおりに進めば、ユーラシア全体として非自由主義的な安全保障の秩序が築かれていく見通しが強い。中国は米国主導の既存の自由主義的な国家主権尊重の原則に対して、敵対的な態度をみせている。すでに中国は、既存の国際社会が作り上げた自由主義的な制度を抑えつけるための、新たな規則や規範、制度を作り始めた。

 中国は、自国の価値観や制度の拡大のために他国に干渉する公算が大きい。中国当局が公式に宣言してきた他国の内政への不干渉政策は、すでに放棄されつつある。一帯一路に関しても、中国政府にとって重大な海外プロジェクトの保護や防衛のために軍事的な介入を行う可能性がある。ユーラシア地域全体で、一帯一路の拡大とともに政治環境が拘束的、専制的になる気配がすでに見受けられる。

【同調しない国を抑圧】

 一帯一路は、まず経済面で中国が強大な力を発揮することを意味するが、その影響力やパワーは、他国に中国の構想や価値観に同調することを強いるようになりかねない。だが、他国が中国の構想に抵抗や反対をする場合、その国と米国との間で軍事同盟がないと、中国の直接の圧力や威嚇にさらされる危険性が高い。

 中国が特定の国に対して安全保障面での要求を迫る実例はすでに起きている。中国は最近、韓国に対して経済面でのアメとムチを使って、米国の高高度迎撃ミサイルシステム(THAAD)配備を中止させようと圧力をかけた。また、フィリピンに対しても、南シナ海での自国の領有権の主張を通すため、果物の輸入制限や観光旅行への圧力など威圧的な措置をとった。さらにギリシャに対しても経済上の報酬をちらつかせ、欧州連合(EU)に対する中国の主張を代弁させている。

 以上がラトナー氏の一帯一路への警鐘といえる証言の要旨である。日本でも当然、参考にすべき指摘といえよう。それにしても、日本での一帯一路をめぐる議論では安全保障や軍事への考慮があまりに欠けている点が改めて浮かび上がる公聴会であった。
以上




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